第5回 文章で出てくる前置詞や副詞
語学の勉強をする際にいつも問題となるのは “レベル” です。初級、中級、上級とそう簡単に分けられるものではありません。
例えば中国語に関して、日本人は漢字を使うので、読みに関しては比較的簡単に初級レベルを卒業できそうですよね。少なくとも欧米の学生とかだと漢字の書き方から始めなければいけませんし、語のニュアンス(氵は水を表すとか)をつかむのも大変です。一方で日本人の場合は読めても聞き取りやスピーキングは意味不明…という人が多いです。音が全く違うのでそれはある意味当たり前ですね。
さて、今回のテーマは読むレベルが上がった時のこと。初級の教科書ではピンインや基本文法を学びますよね。で、中級の教科書を見ると様々な句法とかが載っています。問題となるのは長文を読むとき。必ずと言っていいほど新キャラ(知らない単語)が出てきます。とはいえ見たことのない名詞や動詞なら調べればいいんです、困るのは
多義の副詞や前置詞。
こういうのは(少なくとも初級の)教科書ではあんまり紹介されておらず、調べてもはっきりしないことすらあるので厄介です。
その中には漢文を学んだ際に「置き字」となっているものもあります。今までは読み飛ばしても良かったものを読んで意味を取らなければいけない、これは大きなステップだと思います。例えば「すなわち」とか、日本語でもうまく説明できないですよね。ネイティブがニュアンスで使っちゃう言葉こそ、中級で課せられる試練かもしれません。
例文で確認してみます。下線部に何が入るか考えてみてください。
1. 许多中国人都有午休的习惯。住得公司近的人直接回家午睡,路远的人__趴在桌上小憩。
2. 尽管韶山的室外温度也许高__北京,但她仍然无法忍住当地可降至10度以下的"室温"。
3. 很多中国旅客把自己__看到的日本情况发到了网上。
それでは解答を確認していきます。
1. 则
対比を表すときに使う「则」は「〜について言えば」といった感じの意味です。その他にも多くの意味があって、
① 〜すると(前後関係、因果)
ex.) 日出则起(日が昇ると起きる)、欲速则不达(急ぐと失敗する)
② 〜には(原因や理由の列挙)
ex.) 一则无经验,二则资金不足(一つには経験不足、そして二つ目は資金不足)
③ 強意
などです。もちろん名詞で「規則」という意味を表すこともできます。
2. 于
この場合は比較の意味です。「比」とは語順が違いますね。
【比+対象+adj =adj +于+対象】となっています。
また、他の例としては、
科举制度诞生于隋朝。(科挙制度は隋の時代に始まった。)
通知已于昨天发出。(通知は昨日もう出されている。)
この意味だと場所を表しています。在の書き言葉系ですね。
さらに、由(〜から)や向、给、对(〜に)の意味を表す場合もあるそうです。文章中に出てきたときに確認するしかないですね…
3. 所
これは「〜するところの」という意味です。日本語と似ているような…
他の例文で確認すると、
我所了解的情况(私が知るところの状況)
所知不多(あまりよく知らない)
尽我所能(私ができる限り)
无所作为(できることがない)
少し文語チックというか、格好いい表現になる気がします。
ちなみに「“为wéi / 被bèi”+名詞+“所”+動詞」だと受動態になります。
为别人所笑(他の人に笑われる)、これは漢文などでおなじみかもしれません。
最後に、先ほどの例文の解答と訳例を示しておきます。
1. 许多中国人都有午休的习惯。住得公司近的人直接回家午睡,路远的人则趴在桌上小憩。(たくさんの中国人は昼寝の習慣がある。会社付近に住んでいる人は家に戻って昼寝をし、遠い人は机の上にもたれてちょっと休憩する。)
2. 尽管韶山的室外温度也许高于北京,但她仍然无法忍住当地可降至10度以下的"室温"。(韶山の室外温度は北京よりも高いが、彼女はその地で10度以下にまで下がる室温に依然として耐えるしかない。)
3. 很多中国旅客把自己所看到的日本情况发到了网上。(多くの中国人客は自分が見た日本の情景をネット上に流す。)
以上、文章中の表現についてでした。最後まで読んでくださりありがとうございます。