チンパンジーの知恵袋

中国語を学ぶチンパンジーが面白いと感じたことを綴ります

香港情勢について 〜なぜ今大規模デモが起こっているのか?〜

 中の人がとても忙しく、久しぶりの更新となりました。今回は今ニュースにもなっている香港の「逃亡犯条例」についてです。このブログは政治的な発信をする目的はありません。ただ、中国に関心をもち、中国語を勉強している者として、簡単にですが少し書かせていただきます。日本とのつながりも深く、人気観光地の一つでもある香港の社会背景や大規模なデモが起きている理由は日本の方にもぜひ知ってほしいです。

 基本的には、香港の友人に拡散してほしいといわれた文章です。

逃亡犯条例とは何か

逃亡犯条例とは、香港以外の国や地域で犯罪を犯した容疑者を、相手側の要請に応じて香港から引き渡せるようにするという規則です。これ自体は特に珍しいものでもなく、日本も米国や韓国と同様の条約を結んでいます。

背景

 そもそも「逃亡犯条例」のきっかけとなったのは、台湾で発生した「潘曉穎事件」です。2018年2月に香港人学生の陈同佳が恋人の潘曉穎を殺害したあと、遺体を台湾の公園に遺棄し、香港に逃げ帰りました。台湾警察は陈同佳を国際指名手配したものの、当時のルール上台湾には条例が適応されていなかったので、香港は台湾に容疑者を引き渡すことができませんでした。

 香港が台湾に陈同佳を引き渡すには逃亡犯条例の改正が必要となるのです。しかし中国と「一国二制度」の社会構造を持つ香港としては、台湾とだけ条例を結ぶ(台湾を一つの独立国と認める)ことは難しく、中国本土に対しても引き渡しができるような内容の改正案となったわけです。ここが今回のデモの火種です。

引き渡しの条件

 1 対象となる犯罪は、香港でも犯罪行為としてみなされている事。

 2 対象となる犯罪は、香港現行の「逃亡犯条例」中46種類の犯罪に含まれている事。

 3 死刑を下せる犯罪であれば、引き渡し先が死刑は絶対に下さないと承諾する事。

 4 同じ犯罪で2回以上の裁判はしない事。

 5 引き渡し時の罪以外、追加の罪で裁判を行わない事。

 

 国籍、宗教、政治、人権とかかわる犯罪容疑は引き渡しをしないと主張されていますが、過去中国政府にとって都合の悪い人物がビジネス犯罪、交通事故などの名目で逮捕されたケースもあります。これらのことを鑑みて、香港人が最も心配しているのは、中国政府が同じような手口を使って、香港にいる無実な人や反中国政府派の人に別の容疑をなすりつけ、引き渡しを要請し、中国本土に連行することです。本土では中国共産党が(唯一の)正義として裁判が行われるため、それが公正で公平であるのかは誰にもわからないとの懸念があります。実際これまでに民主活動家の逮捕例もありますし、チベットや新疆の自治区での民族的な弾圧の例を見ると現在の中国では言論、表現の自由や政治的多様性が認められているとは言い難く、これが香港の人にとって条例改正の大きな問題点となっています。

逃亡犯条例の改正が可決されると

 中国本土への引き渡しが可能になるとその影響は小さくありません。香港にいるあらゆる人物が、中国政府に犯罪の容疑をかけられると、香港政府のトップの行政長官と法廷の合意のもと中国本土に引き渡されて裁判をうける可能性が生じます。

 香港は1997年の返還以降、「一国二制度」の言葉が示すように、中国とは異なる独自の法制度や国境をもち、表現の自由も保証されてきました。また、政治の透明度の目安となる腐敗認識指数についても世界上位です。しかし逃亡犯条例の改正が可決されると、少なからず香港の司法への中国の介入が発生すると考えられ、これまで保たれていた独立性に関わってきます。

 香港の独立性については過去にも議論があり、香港では普通選挙制が取られておらず実質的に親中派が政治のトップにつくということをはじめ、中国共産党とのつながりが近年増している、という声があります。そのことを懸念する声も多く、2014年の雨傘運動など、最近もデモが行われてきました。デモは香港人表現の自由を具現化して意見を示す場としての意味を持っていると言えます。

 香港は世界的に見てもビジネスの要所であり、経済・ビジネスの中心としての役割を担っていますが、ビジネスが盛んである理由はその自由度があるからこそとも言えます。逃亡犯条例の改正の結果次第では大きな変化が起きるかもしれません。今後も情勢を注視していく必要がありそうですね。

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