第10回 中国の各地の料理紹介&調理法あれこれ
2月になりました。昨日は旧暦の正月、中国では春節として(1月1日より)盛大にお祝いしますね。特に大晦日には北方では饺子(餃子)、南方では汤圆(白玉的な)など、各地で伝統的な料理を食べる習慣があります。
ということで今回は料理の話をしようと思います。皆さんは、世界三大料理がどこの料理かご存じでしょうか?食材の芸術であるフランス料理、 多文化が融合したトルコ料理、そしてもう一つが中華料理です。
中華料理は、日本にも至る所に店がありますが、中国に行くとその比じゃないほど多くの店があります。逆に中国ではあまり洋食店を見ないので、基本的には中華料理(と分類されるもの)です、もちろん都市部ではファーストフードチェーン店や和食とかもありますけれども。
本場の中華料理は、日本で食べるものとは少し違う場合が多いです。日本の、特に高級なレストランで出てくる中華料理は、Japanizeされた日本人向けの料理という感じです。辛くない麻婆豆腐とか、黒酢酢豚とか…現地のは一般的にもっと香辛料とか油を使っている印象があります。なので現地の味が口に合わないって言う人もいますし、逆にやみつきになる人も。
そもそも中華料理、という言い方についてですが、中国は東は温帯北は冷帯、南は亜熱帯、西は高山、と東西南北で気候も植生も違います。よく言われるのが「淮河(Huáihé)」がコメの栽培北限であるということ。今は品種改良により黑龙江(Hēilóngjiāng, 黒龍江)省や辽宁(Liáoníng, 遼寧)省でもコメが作られていますが、昔は北部では小麦やこうりゃん(高粱, Gāoliang)しか取れなかったんですね。そういう理由で食生活も当然北と南で違うわけです。東西もまた然りで、海が近い都市では海産物を食べますし、内陸では淡水魚だったり家畜の肉中心だったり。
というわけで要するに、都市によって料理が全然違うよ、という話です。それではいくつか代表的な料理を見ていきたいのですが、ここで少々問題が。どうやら日本と中国とで「中国料理」の区分が違うようなのです…
日本では「北京料理」「四川料理」「上海料理」「広東料理」といった感じですが、中国では「四川料理」「淮揚料理」「広東料理」「山東料理」なんだそう。しかも、その後「湖南料理」「浙江料理」「安徽料理」「福建料理」も追加された8区分も一般的になっているんだとか…
結局、各地で料理が違うから分け方は色々ある、ということにしましょう(国が広いですもんね)。
とりあえず今回は区分の正確さよりも実体験を重視して、今までに経験した特色のある中国料理をいくつか紹介します。
① 东北菜(東北料理)
北京とか東北地方で食べられる料理。前述の通り昔はコメが獲れない地域だったので、小麦やらが多いです。あと、寒い地域なので(?)味付けは結構濃いそうです。代表的なのは餃子ですね。ちなみに中国の餃子は水餃子が基本です。焼餃子は煎饺という名前で売られることも。
また、馒头も有名です。日本の饅頭とは違って餡は入っていません。小麦粉で作ったパンみたいなものです。味がない場合も多く、要するにコメの代わりです。パサつくので個人的にはあんまり量は食べれません(笑)
写真は北京の有名店、「悦宾饭馆」です。胡同にある小さなお店ですが美味しい。
あと東北部は羊肉料理が多いですね。串に刺したりクミンとか野菜と炒めたり。北京料理というとすぐ「北京ダック」が思い浮かびますが、あれはある程度高級なのでローカルフードという感じではないですね。
②川菜(四川料理)
言わずと知れた、辛い料理の代表。聞いた話では、盆地で曇りが多く湿度の高い四川では、辛いもので汗をかいてスッキリしたいんだとか。汗かくと余計に不快指数が上がりそうですけどね…
辛さには麻(痺れる辛さ)と辣(Hotな辛さ)の2種類あります。四川料理はその合わせ技なので、辛いものが好きな人にはたまりません。でも逆に何でも辛いので苦手な人は辛くないものを探すか頼むかするしかありませんね。
代表選手は麻婆豆腐。日本の味付けとは違います。山椒がビリビリ効いているので、何も知らずに子供が食べたら失神します…でも好きな人はハマる味。
このお店、陈麻婆豆腐という老舗です。多分一番有名な麻婆豆腐の店。成都市に行ったらぜひ試してみてください。
四川料理は他にも、火鍋や水煮鱼(水煮と言ってるのに辛い)、麻辣香锅など、美味しいものがたくさんです。日本でも本格的なものを食べられるのでぜひ。
冬とか、みんなで辛い火鍋をつつくのもいいですね。
↑@麻婆唐府 これは池袋の店。今や日本でも本格中華が楽しめます(笑)
この店は中国からの留学生もイチ押しのお店なんだそうです。
③广东菜(広東料理)
食在广州と言われるほど食事が美味しいらしいです。ちなみにこのことわざ、続きがあるそうで、百度によると「食在广州,穿在苏州,玩在杭州,死在柳州」とのこと(諸説あり)。蘇州は絹が有名、杭州は西湖などの観光地にあふれ、そして柳州は棺にする木材が有名だからなんだとか…
広東料理は味が日本人好みとよく言われます。味付けがあっさりしていて上品な感じです。牛肉とセロリのオイスターソース炒めとか海鮮炒飯とかそういうやつです。あと点心も言うまでもなく人気ですよね。これも広東風です。
そして、現地で人気なのがお粥。また、肠粉というワンタンと餅の中間みたいな料理、すごく美味しいです。
実はこのお店、広州の有名店なんですね。ランチタイムはお粥と肠粉のセットが30元でした!
あとは海産物。特にフカヒレとかアワビとかも獲れることから、高級中華と呼ばれるのは結構広東料理だったりします。
④淮揚料理
初めて聞きました…調べてみると、淮河,扬子江(長江)下流域の料理とのことで、上海料理や杭州料理のルーツなんだとか。となれば何となくわかります。味としては上海、杭州もあっさり系です。上海は海産物(蟹とか)が有名ですし、杭州はエビやお茶とかの特産品を使った料理も。
あと忘れちゃいけないのは东坡肉(角煮)ですね。かの有名な詩人、蘇軾が考案したと言われる歴史ある料理です。
⑤山东菜(山東料理)
中国四代料理にも入っている山東料理。行ったことないので調べてみると、山もあり海にも面しているので、食材が豊富なんだそうです。魚や鶏を揚げたもの、木耳と卵の炒め物、酢豚的な味付けのやつ…調理法も豊富ですね。日本の中華料理屋でも出てくるメニューなので結構イメージしやすいかもしれません。
以上いくつか挙げてきましたが、これはほんの一部で、他にも美味しい料理はたくさんあります。例えば少数民族が住む地域(雲南省、新疆 、チベットetc.)では特色ある美味しい料理が味わえます。個人的には新疆の羊肉串や雲南のキノコ類が好きですね。中国の大都市にはそういう店がありますし、日本でも食べられるのでぜひ。
写真は北京にある少数民族料理屋で出てきた鶏肉のスープです。水炊きとかと似た、日本に通じる鶏出汁の味でした。
皆さんもぜひ本場の中国料理を味わってみてはいかがでしょうか!
<補足、料理用語について>
ここからは少し言葉の話を。料理で使う単語についてです。
僕らが中国に行って店に入ると、高確率でそこには「炒めた食べ物」があります。でも言葉が違うのです。さて、単語の使い分けはどうなっているのでしょうか。
例えば、焼きそばを「炒面」とは言うけど「烤面」は見たことがありません。北京ダックは「北京烤鸭」です。「炒鸭」ではありません。香港に行った時には「炒蛋還是煎蛋?」と聞かれて悩みました…いや、どっちも焼いとるやん、何の違いがあるんだ?という話です。
いくつか並べてニュアンスの確認です。
炒;炒める(炒飯とか、野菜とか)、通常強火でかき混ぜながら
爆;手早く油炒め
煎;薄く油を引いて焼く、裏返すようなものを焼く
烤;油少なめの焼く、炙る
炸;揚げる(fry)
烧;焼いて煮る(角煮とか)
煮;短めに煮る
熬;長くトロトロ煮る
調べてみたらびっくりです。まだたくさんあったのですが、キリがないのでこの辺で…使い分けが微妙なやつもありますが、ケースによって区別されているんですね。
Wikipediaで中国語で料理法を調べるとたくさん出てきます、参考までに。
香港で言われた「炒蛋還是煎蛋?」これはスクランブルエッグか目玉焼きかということでした。確かにスクランブルの方がガシガシ炒める感じがあります。
これだけ細かく調理法を言葉で区別する。これは料理に対する中国の信念と中華料理の幅広さを表しているのかもしれません。さすが食の大国だけあって奥深い…また新たな料理に出会ったら続きを書こうと思います。
長くなりましたが最後まで読んでくださりありがとうございます!ではまた次回。